Cross Border Succession台日国際相続
どのような場合に台湾・日本間の国際相続が発生するか?
グローバル化が進むにつれて、国際結婚・海外居住・海外投資等はもはや珍しいことではなくな
り、「台湾・日本間の国際相続」の問題もこれに伴い増加傾向にあります。国際相続は台湾と日本
の異なる法律と制度に関わるため、その手続きは想像以上に煩雑です。
「国際相続」は、以下のような状況に関わる可能性があると考えられます。
| 国際相続 | |
|---|---|
| 身分 | 被相続人と相続人の国籍が異なる |
| 被相続人や相続人が重国籍者 | |
| 居住地 | 被相続人が海外に居住していた |
| 遺産 | 被相続人の遺産が台湾と日本の両方にある |
| 遺言書 | 他国の遺産に係る |
これらのいずれかに該当する場合、「国際相続」の手続きが必要となる可能性があります。
国際相続はなぜ複雑か?
以上の要素が絡み合っているため、国際相続は非常に複雑になります。このコラムでは、特に
「台湾・日本間の国際相続」に焦点を当て、注意すべき重要なポイントを簡潔に紹介します。ご不明な点や、より詳細な情報については、お気軽に当事務所にお問い合わせください。
適用される法律は?(準拠法)
国際相続において最も基本的かつ重要なのが、「どの国の法律に基づいて相続手続きを進めるか」という準拠法の問題です。これは、誰が相続人になるのか、各相続人の相続分(取り分)はどうなるのか、といった相続の根幹に関わるルールを決定します。中華民国(台湾、以下同様)と日本の法律は、原則として被相続人が死亡した時の本国法によると定めています。つまり、適用される法律は、被相続人が死亡時にどの国の国籍であったかによって、適用される相続法が決まります。
注意点:準拠法 vs. 遺産所在地法
中華民国(台湾)法においては、相続人の資格や相続分等は被相続人の本国法に基づいて判断されますが、不動産等に関する相続登記や処分方法については、原則として不動産の所在地の法律に従う必要があります。例えば、相続の準拠法が日本法であっても、台湾にある不動産の相続登記を行う際には、台湾の土地法や関連法規に従う必要があります。
| 被相続人 の国籍 |
遺産の所在地 | 相続関係の準拠法 (被相続人死亡時点の国籍による) |
遺産に係る処分の根拠法 (遺産の所在地) |
|---|---|---|---|
| 台湾籍 | 台湾 | 中華民国法 | 中華民国法 |
| 日本 | 中華民国法 | 日本法 | |
| 日本籍 | 台湾 | 日本法 | 中華民国法 |
| 日本 | 日本法 | 日本法 | |
| 日本へ帰化した方 | 台湾+日本 | 日本法(死亡時は日本籍) | 遺産の所在地による – 台湾の遺産:台湾法 – 日本の遺産:日本法 |
相続人は誰か?(相続人の特定)
相続手続きを進める上で、誰が法的な相続人となるのかを確定させる必要があります。台湾も日本と同様に戸籍制度があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本、原戸籍謄本を含む)を取得することで、相続人を特定することができます。
| 項目 | 台湾 | 日本の戸籍の種類(参考用) |
|---|---|---|
| 現行 戸籍 謄本 |
現戸全戸戸籍謄本 申請時点における当該住所の世帯の現住構成員(及び非現住者※)の情報が記載されている。 ※「非現住者」とは、その世帯に過去に属していた構成員のうち、「国外への転出」「死亡」「死亡宣告」「戸籍の廃止」のいずれかに該当する者を指す。 |
戸籍謄本/戸籍全部事項証明書 当該「戸籍」が編成されてから現在までの全員の情報が記載されている。 |
| 現戸部分戸籍謄本 戸籍内の構成員のうち、指定した構成員の情報のみ表示される。 |
戸籍抄本/戸籍個人事項証明書 戸籍内の構成員のうち、指定した構成員の情報のみ表示される。 |
|
| 記載内容 「記事欄」は「詳細記事」又は「省略記事」を選択可能。「詳細記事」は、住所変更、出生、死亡、結婚、離婚、養子縁組等の内容を含む。 |
記載内容 氏名、出生年月日、父母の氏名、続柄、配偶者、子女、本籍地、出生、死亡、結婚、離婚、養子縁組等の事項 |
|
| 除籍 謄本 |
除籍謄本 戸籍の筆頭者の変更前の戸籍謄本、又はその他の事由により戸籍の情報が書き換えられた戸籍謄本 |
除籍謄本 その戸籍に記載されていた全員が、死亡、結婚、転出等の理由により「全員除籍」され、その結果、当該戸籍自体が閉鎖され、現行の戸籍ではなくなったもの。 ※実務上では、日本の銀行等で相続手続きの際に求められる除籍謄本は、「亡くなられた方の除籍が記載された戸籍謄本」を指していることが多い。 |
| 旧式/ 改製 前謄 本 |
手書きの戸籍謄本 民国86年(西暦1997年)9月30日に全国電子化が実施される「以前」の「手書き」様式の戸籍謄本情報 |
改製原戸籍謄本 法改正や電子化が行われる前の旧様式の戸籍謄本を指す(例:平成改製原戸籍、昭和改製原戸籍)。 |
| 電子化時期 全国統一で民国86年(西暦1997年)9月30日にオンライン接続作業が完了。 |
電子化時期 各市区町村ごとに異なり、法改正(平成年間等)に伴って行われることが多い。それ以前の記録は改製原戸籍となる。 |
台湾の戸籍謄本取得申請に留意すべき事項
1. 各銀行や行政によって求められる種類が異なることがあるため、必要とする戸籍の種
類をあらかじめ明確にすることが不可欠です。
2. 「全戸戸籍謄本」は枚数が多くなる場合があり、ページ数の多さなどを理由に、関連
するすべての記録を円滑に取得できないことがあります。
3. 個人情報保護の観点から、利害関係を証明する書類(銀行の相続書類や続柄の証明等)
の提出を求められる場合があります。
4. 古い手書きの戸籍は、毀損やデータ化の誤り等で取得が困難な場合があり、状況によ
り、その古い手書き謄本が保管されている元の戸籍のある戸政事務所まで出向いて調
査が必要になることがあります。
5. 台湾で取得した戸籍謄本を日本で使用する場合は、一般的に日本語への翻訳及び関連
する認証手続きが必要になります。
台湾における相続の主な手続き
台湾の国際相続における特有の考慮事項
(一)煩雑だが不可欠な書類の認証
国際相続において、一方で発行された書類を他方で使用する場合、その書類の真正性を証明するための「認証」手続きが必要となります。
認証プロセス例 (台湾の戸籍謄本を日本で使用する場合)
ポイント:
1. 公文書(戸籍謄本等)と私文書(委任状等)では、認証のプロセスが異なる場合があ
ります。
2. 書類を使用する国の在外公館での認証が必要となる場合があります。(例:台湾で発
行された書類を日本で使用する場合は、まず台湾の裁判所又は民間の公証人役場によ
る認証を受けた後、次に台湾外交部による認証を受け、さらに日本にある台北駐日経
済文化代表処又はその管轄の弁事処による認証を受ける、といった段階的な手続きが
一般的です。※実際の状況に応じて手続きは異なる可能性がありますので、必ず最新情報をご確認くださ
い)。
3. 日本の各台北駐日経済文化代表処(弁事処/分処)には管轄区域がありますので、事前
に確認することが重要です。
(二) 台湾の法定相続分
中華民国(台湾)法で規定する法定相続分は日本と若干異なることに留意が必要です。
| 順位 | 相続人 | 配偶者と共に相続する場合の相続分 |
| 第一順位 | 直系血族卑属(子、孫など) | 配偶者と子(卑属)で等分 |
| 第二順位 | 父母 | 配偶者 1/2、残り 1/2 を父母で等分 |
| 第三順位 | 兄弟姉妹 | 配偶者 1/2、残り 1/2 を兄弟姉妹で等分 |
| 第四順位 | 祖父母 | 配偶者 2/3、残り 1/3 を祖父母で等分 |
| – | 配偶者(単独相続) | 全て(第一順位から第四順位までの相続人全てが存在しない場合に、配偶者が単独で全てを相続する。) |
(三) 遺留分(中華民国法の「特留分」)
中華民国(台湾)の民法では、遺言によっても完全に剥奪することができない法定相続人の最低限の取り分(遺留分)を保障しています。配偶者(法定相続分の 1/2)、直系血族卑属(法定相続分の 1/2)、父母(法定相続分の 1/2)、兄弟姉妹(法定相続分の 1/3)、祖父母(法定相続分の 1/3) が対象となります。遺言の内容が遺留分を侵害している場合、遺留分権利者はその取得すべき分配額を請求できます。
よくある Q&A
以下に、台湾・日本間の国際相続においてよくご相談いただく質問を表形式でまとめました。
| 分類 | よくある質問 | 回答 |
| 税務 関連 |
相続税納付の期限は? | 台湾の相続税は、原則として被相続人の死亡日から6ヶ月以内に申告が必要。 |
| 戸籍 や相 続人 関連 |
台湾の戸籍を取り寄せたところ、知悉していない相続人がいた。遺産相続はどうなるのか? | 原則として台湾の相続人を含む全ての法定相続人の同意(遺産分割協議書への署名等)がなければ、日本・台湾いずれの遺産についても相続手続きは進められない。 被相続人が日本国籍の場合、相続は日本法に基づく。台湾の戸籍に記載されている子が(日本の)法律上の子と認められる場合、その子は日本の民法に従った相続権を有する可能性がある。遺産分割協議にはその子も含める必要があるかもしれない。 |
| 日本での相続で帰化前の台湾戸籍が必要と言われたが、取得できるか? | 原則として取得可能。相続人(利害関係者)は被相続人の日本への帰化前の台湾の戸籍謄本(原戸籍)を申請できる。申請には、利害関係(相続関係)を証明する書類(帰化事項の記載がある戸籍等)が必要であり、日本で発行された書類の場合、翻訳・認証手続きが求められる場合があることに注意が必要。 | |
| 遺言 書と 書類 関連 |
日本で作成した遺言書は台湾で有効か? | 遺言書は、原則として法律により「遺言者の本国法」、「遺言書を作成した地の法」、「遺言者が死亡時に住所を有した地の法」、「遺言が不動産に関係する場合は、当該不動産の所在地法」等のいずれかに基づき作成されていなければならないと定められている。ただし、外国法で作成された遺言書に関しては、台湾の実務においては裁判所の認定又は判断を要することがある。 |
| 日本の書類はそのまま台湾で使えるか | 原則として台湾の行政機関に提出する外国の書類は全て中国語訳文を添え、台湾の在外機関(台北駐日経済文化代表処等)の認証手続きを要する。 |
最後に
これまで見てきたように、台湾関連の国際相続は非常に複雑であり、多くの時間と労力、そして専門知識を要します。手続きの誤りや期限の徒過は、予期せぬ不利益やトラブルにつながる可能性があります。
したがって、台湾関連の国際相続が生じた場合は、できるだけ早い段階で当事務所に相談することを強くお勧めします。当事務所は、日本と台湾双方の相続に精通した専門家チームを有しており、これまで数多くの日台間の国際相続案件を手がけてきた豊富な実績がございます。
このほか、当事務所には日本語・中国語に対応可能なチームがあり、複雑な書類の収集・翻訳・認証手続きから、遺産分割協議のサポート、不動産の名義変更手続き、そして相続税の申告まで、ワンストップでのサポートを提供することが可能です。個々の依頼者様のご状況とご意向を丁寧に伺い、法務・税務の両面から最適な解決策をご提案させていただきます。どのようなご質問でも、まずはお気軽にお問い合わせください。煩雑な手続きや言葉や文化の壁からくる不安を解消し、一日も早く平穏な日常を取り戻していただけるよう、当事務所が全力でサポートいたします。
Cross Border Investment台日クロスボーダー投資
日本法務|台日クロスボーダー投資
当事務所は2000年の設立以来、国際的な法務サービスを提供することに尽力し、特に台湾と日本間の法律・ビジネス法務に長年にわたり注力してまいりました。台日双方の企業文化や市場動向に精通し、日本語・英語・中国語によるコミュニケーションを基盤として、上場企業を含む数多くの日本企業の皆様の台湾における長期的かつ安定した発展を全面的に支援しております。当事務所は20年以上にわたる日台間の実務経験を通じ、クロスボーダー投資(日系企業の台湾進出・台湾企業の対日投資のいずれ)においても、企業の皆様が直面する課題は、往々にして単なる法律条文そのものに留まるのではなく、むしろそれぞれの法規・制度設計や文化に対する認識と実行上のギャップ、そして変動性の高いリスクコストであることが多いと理解しています。
台湾企業の対日進出においては、進出初期から複雑な手続きに直面します。例えば、日本の金融機関による極めて厳格な口座開設審査が高いハードルとなり、法的に法人登記を完了した後であっても、口座開設が滞る事態は珍しくありません。また、投資プロセスにおいて、日本側との交渉が必要な場面では、見極めが難しい日本特有の「本音と建前」といった言語や文化による障壁により、膨大なコミュニケーションコストを要することが多々あります。
当事務所は、企業のトータルコストの最適化を基本方針として、「先見性のある戦略分析」と「綿密かつ専門的な対話」を特に重視しております。投資の初期段階から継続的な事業拡大に至る各フェーズにおいて、台湾と日本現地の専門家(日本の弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士など)ネットワークを統合したワンストップ・リーガルサービスを提供いたします。日台双方の管理部門間の連携強化を支援し、台湾進出を目指す日本企業の皆様、そして日本市場進出を目指す台湾企業の皆様に対し、迅速かつ専門的、そしてクライアントのニーズに即したサービスを提供し、企業の長期的な成長と共に歩むパートナーとなることを目指しております。
サービス領域
投資関連法規・制度枠組み
企業法務(コーポレート)





